令和3年度戦略的基盤技術高度化・連携支援事業(中小企業の研究開発支援を通じたイノベーション政策の在り方)成果報告書
報告書概要
この報告は、中小企業の研究開発支援を通じたイノベーション政策の在り方について書かれた報告書である。
令和3年度に中小企業庁の委託により有限責任監査法人トーマツが実施した戦略的基盤技術高度化・連携支援事業の成果報告書となっている。平成18年度に創設されたサポイン事業は、約2,000者以上の中小企業に対し、ものづくり基盤技術の高度化に関する指針に基づいて研究開発を支援してきた。この事業により採択企業は、採択から6~8年後に売上高約20億円、売上総利益約3億円程度の増加効果が確認されている。
しかし、研究開発の最終年達成度が89.0%である一方、事業終了後5年時点での事業化率は45.8%にとどまっており、研究開発成功が直接的に事業化に結び付かない課題が浮き彫りとなっている。事業化率低下の要因として、産学連携における大学・公設試験研究機関との連携不足、国費による財政的制約から生じる支援範囲の限界、マクロ外部環境の変化への対応不足が挙げられている。
これらの課題を受けて本報告書では、ものづくり高度化指針の見直し、大学・公設試験研究機関との連携強化、ファンド枠の検討という3つの観点から制度改革に向けた論点整理を行った。ものづくり高度化指針の見直しでは、成長産業分野の動向整理、高付加価値企業への変革、先端技術を活用した高度なサービス開発の観点から検討が実施された。連携強化については、研究開発の事業化に向けて中小企業と大学公設試等との連携促進方策が検討され、ファンド枠については民間の金融機関との連携による資金課題解決策が検討された。各検討では有識者による研究会が設置され、制度改革に必要な考え方と今後の論点が精緻化されている。
