令和3年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等委託事業(エネルギーに影響を与える国内外の経済社会動向に関する調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、令和3年度にエネルギー需給構造高度化対策として実施された、国内外の経済社会動向がエネルギーに与える影響に関する調査報告書である。2021年のCOP26を契機として、カーボンニュートラル目標を表明する国・地域が世界のGDPの約90%を占めるまで急増し、ESG投資も35.3兆ドルに達するなど、脱炭素化の潮流が世界的に加速している。パリ協定第6条の市場メカニズムが妥結し、各国に対してNDCの2030年目標を2022年末までに再考・強化することが求められた。米国のバイデン政権は2030年に2005年比50-52%削減、2035年に発電部門脱炭素化を目標とし、インフラ投資・雇用法により1兆ドル規模の投資を実施している。EUは2030年削減目標を1990年比55%に引き上げ、Fit for 55政策パッケージを発表し、2035年以降の内燃機関自動車販売禁止や建物のエネルギー効率向上を進めている。英国は2050年ネットゼロを法制化し、グリーン産業革命10ポイントプランにより260億ポンド以上を投資している。ドイツは新連立政権の下で2030年に1990年比65%削減を目指し、再生可能エネルギー割合を80%とする方針を示している。中国は2060年カーボンニュートラルを表明し、10大行動分野を定めた行動計画を策定している。2050年に向けては各国で電化、水素化、CCUSの取り組みが進展し、クリティカル・ミネラルや水素が戦略物資として重要性を増している。一方で2021年には天然ガス価格の高騰により欧州やアジアで電力価格が急上昇し、英国では30社の電力小売会社が撤退、中国では計画停電が実施されるなど、エネルギー安全保障上の課題も顕在化した。
