令和3年度コンテンツ海外展開促進事業 映画制作現場の適正化に関する調査報告書
報告書概要
この報告は、映画制作現場の適正化に関する経済産業省委託事業の調査結果について書かれた報告書である。
デジタル時代の到来により映画産業が大きな変革期を迎える中、制作現場の負担増加とフリーランススタッフの取引・就業環境における課題が顕在化している。令和3年度においては、認定制度検証委員会を設置し、映画制作現場の適正化に向けたガイドラインに基づく認定制度の効果検証を3作品で実施した。
主要な議論の焦点は作業・撮影時間の「13時間」ルールの運用方法であった。委員会では、準備1時間、撮影11時間、撤収1時間というみなし時間の概念導入、週単位での勤怠管理の柔軟性、監督の演出時間制限による現場管理の明確化などが検討された。また、13時間ルールの徹底には監督やメインスタッフへの周知徹底、シフト制導入、人員増加などの対策が必要とされた。
契約書と予算面では、制作プロダクションの報酬最低ラインの設定、コストマークアップ方式の採用検討、製作委員会幹事会社への適正予算確保の働きかけが課題として挙げられた。来年度の実証事業に向けては、事前審査申請のリードタイム短縮、予算増減の検証実施、ガイドライン遵守のための具体的手段の議論が必要とされている。
アンケート調査結果では、ガイドライン導入効果として「安全・安心に働くことができる」が41.3%と最多回答を占め、「作品の質向上」26.7%、「優秀な人材の確保」25.3%が続いた。スタッフセンター設置については、「ギャランティーの支払保証制度」14.4%、「労働者災害補償保険の窓口機能」「人材データベース」「福利厚生」「契約書締結の促進・支援」「相談窓口」がそれぞれ10.9%の要望があった。
今後の課題として、映画製作者、制作会社、スタッフセンターの三者協力体制構築、製作委員会への意識改革推進、ガイドラインに準拠した契約書雛形の策定、時間管理責任範囲の明確化が重要である。また、業界全体への周知徹底、出演者事務所との調整、匿名相談窓口設置などの対策も必要とされている。スタッフセンターへの入会意向は68.6%が肯定的回答を示しており、映画業界の労働環境改善への期待が表れている。
