令和3年度中小企業実態調査事業価格交渉促進等に関する調査事業報告書
報告書概要
この報告は、中小企業における価格交渉促進に関する実態調査と支援策について書かれた報告書である。経済産業省では「未来志向型の取引慣行に向けて」の政策パッケージに基づき、親事業者と下請事業者の適正取引や付加価値向上を推進しているが、依然として一方的な原価低減要請や価格交渉の困難が存在している。そこで価格交渉促進月間を設定し、適切な価格転嫁を促進する取組を実施している。
本調査では、価格交渉の実態把握と支援手法の開発を目的として、業種や規模のバランスを考慮した10社のモデル事業者を選定し、ヒアリング調査と価格交渉支援を実施した。調査対象企業には、デザイン制作業、食品輸送業、機械製造業など多様な業種が含まれ、それぞれが発注側企業との価格交渉において異なる課題を抱えている。
各企業の取組状況を分析した結果、見積段階でのリスク項目の可視化、チェックシートの活用、単価表の準備など、価格交渉を円滑化するためのツールや手法が重要であることが判明した。また、燃料費や人件費上昇などの外部要因に対しては、客観的な根拠資料の提示が効果的である一方、人件費の交渉は燃料費に比べて困難を伴うことが明らかとなった。さらに、追加作業発生時の対応として、事前の留意事項記載と適切なタイミングでの相談が成功の鍵となることが確認された。
これらの調査結果を踏まえ、中小企業・小規模事業者向けの価格交渉ハンドブックを作成し、効果的な価格交渉手法の横展開を図ることで、適正な価格転嫁の促進と取引慣行の改善に寄与することを目指している。
