令和3年度産業経済研究委託事業(スタートアップ企業と出資者との契約の在り方検討に向けた環境整備のための調査研究事業)調査報告書

掲載日: 2023年5月18日
委託元: 経済産業省
担当課室: 経済産業政策局産業創造課新規事業創造推進室
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令和3年度産業経済研究委託事業(スタートアップ企業と出資者との契約の在り方検討に向けた環境整備のための調査研究事業)調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、スタートアップ企業と出資者との契約の在り方検討に向けた環境整備のための調査研究について書かれた報告書である。

報告書は令和3年度に経済産業省の委託により株式会社日本総合研究所が実施した調査事業の成果をまとめたものであり、我が国のスタートアップ・エコシステムの強化を目的として、投資契約の実態と課題を明らかにしている。調査では国内外の文献調査とヒアリング調査を実施し、スタートアップ企業と投資家との契約状況を詳細に分析している。

文献調査においては、公正取引委員会の実態調査報告書を基に、優越的地位の濫用や拘束条件付取引など独占禁止法上問題となる可能性のある9つの行為類型を整理している。特に株式の買取請求権については、出資額よりも著しく高額な価額での買取請求や経営株主等の個人に対する買取請求などが問題となる事例として挙げられている。また、米国における契約実務との比較分析も行われ、日米のベンチャー・ファイナンスの相違点が明確にされている。

ヒアリング調査では、国内外のスタートアップ企業、投資家、法律事務所等を対象として実施され、契約実務の実態や課題が浮き彫りにされている。調査結果を踏まえ、有識者による検討会が開催され、健全なスタートアップ投資契約の在り方について議論が行われた。

検討会の成果として、「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」の作成と「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」の改訂が実施された。これらの指針では、投資家とスタートアップ企業の健全な関係性構築に向けた具体的な指針が示されている。

報告書は、個別の取引ごとに最適解を決めることが原則であり、ガイドラインの独り歩きを避ける必要性を指摘している。同時に、スタートアップと投資家双方のリテラシー向上の重要性を強調し、継続的なアップデートの必要性を提言している。今後の課題として、スタートアップのガバナンス向上と健全なエコシステム形成に向けた制度整備の必要性が示されている。