令和3年度大企業等人材による新規事業促進事業(人的資本経営に関する調査及び普及啓発事業)人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~
報告書概要
この報告は、人的資本経営の実現に向けた検討会によって策定された「人材版伊藤レポート2.0」について書かれた報告書である。経済産業省が2020年に公表した「人材版伊藤レポート」から約2年後の2022年3月に公表された本報告書は、デジタル化の進展、脱炭素化への対応、コロナ禍による働き方の変化といった経営環境の激変を受けて、企業が人的資本経営により具体的に取り組む必要性を示している。報告書では、経営戦略と人材戦略を連動させる8つの取組分野を詳細に解説しており、CHROの設置、全社的経営課題の抽出、KPIの設定といった経営体制の整備から始まり、As is-To beギャップの定量把握、企業文化への定着、動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用まで幅広い領域をカバーしている。また、知識と経験のダイバーシティ・インクルージョンの推進、リスキル・学び直しの支援、社員エンゲージメントの向上、時間や場所にとらわれない働き方の推進についても具体的な工夫や実践方法を提示している。海外では人的資本情報開示への機運が高まっており、米国証券取引委員会やサステナビリティ会計基準審議会による基準検討が進む中、日本でもコーポレートガバナンス・コードに人的資本に関する記載が盛り込まれたものの、実際の企業の取組状況には大きな幅があることが指摘されている。報告書は企業が人材戦略を実践するためのアイディアの引き出しとして作成されており、企業経営層と投資家が継続的に対話し、人的資本経営の高みを目指していく場の重要性を強調している。
