令和3年度「大企業等人材による新規事業創造促進事業(創造性リカレント教育を通じた新規事業創造促進事業)」事業報告書
報告書概要
この報告は、令和3年度経済産業省「大企業等人材による新規事業創造促進事業」において実施された創造性リカレント教育プログラムについて書かれた報告書である。
既存のビジネスモデルや技術の延長線では消費者ニーズを十分に満たせなくなっている現状において、効率性を重視する企業組織では新規事業創発に必要な創造性が軽視されてきた課題に対応するため、本事業が実施された。従来のデザイン思考やアート思考といった特定の思考法にとらわれず、人文知の活用など多様な視点を調和・統合させ、新たな関係性を見出すPBL型の創造性プログラムが開発された。
プログラムは社会人経験5年以上の企業在籍者を対象とし、次世代経営者候補層を中心とした24名定員で約2ヶ月間48時間の履修により実施された。観察力、批判力、構想力といった創造的思考力の養成を目指し、武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパスを活用した実践的な学習環境が提供された。8日間のプログラムを通じて、課題設定からコンセプト開発、現実への展開まで一連のプロセスを体験する構成となっている。
事業の成果として、当初想定を上回る参加者を迎え、コロナウイルスの影響による制約もあったものの、参加者の満足度は非常に高く、全受講者が最後まで参加し続けた。プログラム初期には厳しい評価もあったが、最終的には参加者から過去の自分からは出てこない発想や視点を得られたという前向きな評価が多数寄せられ、態度変容という狙いを相当程度達成できたと評価されている。
今後の課題として、講師やメンター、学習環境が果たした役割が大きいため、プログラムの再現性への懸念が挙げられている。また企業内での実施時には受講者のモチベーション格差や初期段階での離脱リスクも想定される。これらを踏まえ、より簡易に体験できる自学自習コンテンツが作成され、創造的思考を身につける入り口として活用される方針である。
