令和3年度産業経済研究委託事業「人材確保等促進税制」の利用状況等に関する調査報告書
報告書概要
この報告は、2021年度に創設された「人材確保等促進税制」の利用状況について調査した経済産業省委託事業の報告書である。
新型コロナウイルス感染症の影響により経済・社会情勢が大きく変化する中、従来の「賃上げ・生産性向上のための税制」から「人材確保等促進税制」へと制度が見直された。この新税制は、新規雇用者の給与等支給額が対前年度比で2%以上増加した企業に対して、新規雇用者給与等支給額の15%を税額控除するものである。
調査では2021年5月から2022年3月まで専用窓口を設置し、問い合わせ対応を実施した。その結果、総問い合わせ件数は2,002件、問い合わせ企業数は1,239社となり、前年度の旧制度と比較して大幅に増加した。問い合わせ内容の分析では、通常要件に関する問い合わせが約8割を占め、特に給与関係と雇用者関係の問い合わせが多かった。助成金関連や出向・異動関連の問い合わせが頻出し、それぞれ全体の約1割を占めた。
有識者及び企業へのヒアリング調査も実施し、税制活用における課題を明確化した。通常要件では、経理部門が人事システムのデータにアクセスできないため、税務知識の乏しい人事部が集計作業を担当せざるを得ない状況が判明した。上乗せ要件については、教育訓練費の支払証明データ収集と、個別費用が教育訓練費に該当するかの判定作業が大きな負担となっている。
課題解決に向けた施策として、既存データを活用した集計方法の検討と、税制活用に成功している企業の取組をベストプラクティスとして横展開することが提案されている。