令和3年度コンテンツ海外展開促進事業(映像制作現場における効果的な人材育成の実証に関する調査)実施報告書
報告書概要
この報告は、経済産業省委託事業として実施された映像制作現場における効果的な人材育成の実証に関する調査について書かれた報告書である。
デジタル時代において映像産業が大きな変革期を迎える中、映画産業の人材育成課題解決を目的として、実際の制作現場での実践的なスキルアップを図る「プラクティカルトレーニング」プログラムが実施された。このプログラムは、映像制作の従事歴が3年以内または商業作品従事が3作品以下の若手人材を対象とし、10プログラム程度で各プログラム当たり実質50日程度の現場指導を想定した制度である。指導者1名につきトレーニー1名という体制で、制作会社へは1日15,000円の指導料が支払われる仕組みとなっている。
実証事業では、全国の映像制作会社に対して広く告知を行い、劇場用映画、地上波・衛星放送テレビドラマ、ネット配信映像作品等の商業作品を対象として募集が実施された。参加には事前面談、目標設定、実践指導、事後評価という段階的なプロセスが組まれ、コロナ対応マニュアルを整備した現場のみが選定される条件が設けられた。
実際の成果として、3件の制作現場でテレビドラマ1件、劇場用映画2件において計10名のトレーニーが参加し、全員が制作会社からの推薦であった。参加者の多くは20代で、技術パート、演出部、制作部、プロデューサー部、美術部など多様な職種にわたってトレーニングが実施された。現場での指導により、トレーニーは分からないことを積極的に質問でき、周囲のスタッフも指導に協力的であったという成果が報告されている。
一方で課題も明らかになった。事業開始時期の関係で大学や専門学校の新卒業生とのマッチングは困難であり、多くの学生が既に就職済みであった状況が判明した。また、配信系プラットフォームの増加により制作現場数が増加し、スタッフ不足が加速している現状も指摘された。さらに、VFX等の最新技術への対応や、グローバル配信に対応した迅速な制作費精算システムの整備などの必要性も浮き彫りになった。