令和3年度補正宇宙開発利用推進研究開発(月面におけるエネルギー関連技術開発(技術課題整理))報告書
報告書概要
この報告は、月面におけるエネルギー関連技術開発について、技術課題整理を行うために実施された令和3年度補正宇宙開発利用推進研究開発の調査報告書である。経済産業省から委託され、株式会社三菱総合研究所と一般財団法人日本宇宙フォーラムが共同で実施した調査である。
本調査は、水素に関する技術課題整理と電力に関する技術課題整理を中心とした月面エネルギー関連アーキテクチャの整理を目的としている。水素技術課題では、月面レゴリスからの水抽出、水の精製・電解、水素の圧縮・液化・貯蔵、輸送といったバリューチェーン全体の検討を実施した。各プロセスにおける処理量と必要エネルギー量を算出し、電気加熱方式と太陽光加熱方式による掘削・抽出手法の比較検討を行った。
電力技術課題では、月面電力供給全体システム、月周辺軌道太陽光発電システム、月面設置発電システム、月面上での送電システムの4つの観点から検討を行った。特に月南極域における太陽光発電の日照条件分析、マイクロ波送受電システムの技術課題、光ファイバー送電技術の可能性について詳細な検討を実施した。
全体アーキテクチャの検討では、永久影領域での水抽出から発着ゾーンでの水素利用まで、複数のアーキテクチャ案を設定し、施設建設、電力供給、物資輸送の観点から総合評価を実施した。その結果、純水処理以降のプロセスを発着ゾーン周辺で実施するC-1案が最も有力な候補として選定された。
本調査では有識者委員会と専門ワーキンググループを設置し、国内外の動向調査も実施した。米国、欧州、中国の月面エネルギー技術開発動向を調査し、各国における要素技術の比較分析を行った。今後の課題として、技術実証試験の実施、国際協力の枠組み構築、産業界との連携強化が挙げられている。
