令和3年度二国間クレジット取得等のためのインフラ整備調査事業(市場メカニズム交渉等に係る国際動向調査)報告書(英語版)
報告書概要
この報告は、パリ協定第6条の市場メカニズム交渉に関する国際動向について書かれた報告書である。
パリ協定が2016年11月に発効した一方で、同時期に当選したトランプ大統領によりアメリカが協定から離脱を決定したが、その後の交渉でパリ協定実施規則が2018年のCOP24で採択された。しかし第6条の市場メカニズムに関する規則については、COP24やCOP25でも合意に至らず、新型コロナウイルスの影響で延期されたCOP26において、ようやく2021年11月に実施規則が採択された。
第6条は三つの仕組みを規定している。第6条2項は各国が独自の市場メカニズムを実施する協力的アプローチ、第6条4項は中央集権的な市場メカニズム、第6条8項は非市場アプローチである。交渉が長期化した背景には、適応資金問題、過去の制度の取扱い、二重計上回避手続きの適用など政治的対立があった。
また任意炭素市場においては、企業による任意クレジットの利用拡大とその質の確保に向けた取り組みが進展している。国際民間航空機関(ICAO)のカーボンオフセット削減制度(CORSIA)も段階的に実施されている。
各国の市場メカニズム動向として、アメリカでは地域温室効果ガスイニシアティブやカリフォルニア州の排出量取引制度が継続運営され、EUでは排出量取引制度の改革が進められている。中国は2021年7月に全国排出量取引制度を開始し、韓国では2050年カーボンニュートラル基本法を制定して排出量取引制度の改革を実施している。これらの動向を踏まえて、パリ協定市場メカニズムの今後の実施に向けた課題分析を行っている。