令和3年度二国間クレジット取得等のためのインフラ整備調査事業(市場メカニズム交渉等に係る国際動向調査)報告書
報告書概要
この報告は、令和3年度に実施された二国間クレジット取得等のためのインフラ整備調査事業として、市場メカニズム交渉等に係る国際動向について調査した報告書である。
2016年にパリ協定が発効したものの、米国の政策変更やコロナ禍による会合延期などにより、パリ協定第6条に規定された市場メカニズムの実施規則の採択は大幅に遅れることとなった。パリ協定第6条では、協調的アプローチ、第6条4項メカニズム、非市場アプローチという3つの措置が規定されており、それぞれについて具体的な実施規則の策定が求められていた。2018年のCOP24では第6条以外の実施規則は採択されたが、第6条については各国の見解対立により合意に至らず、2019年のCOP25でも同様の結果となった。
交渉が長期化した背景には、適応資金の問題、過去のCDMの取り扱い、ダブルカウント回避手続きの適用など政治的論点と、ITMOsの単位やベースライン設定方法などの技術的論点の両方が存在していた。2021年には英国がCOP26議長国として閣僚級会合を開催し、政治的対立の解消に努めるとともに、技術的課題についてもオンライン会議で集中的な議論が行われた。
この結果、2021年11月のCOP26において、ついにパリ協定第6条の実施規則が採択された。同時に、ボランタリークレジット市場の拡大、CORSIAの実施、各国の排出量取引制度の発展など、市場メカニズムを取り巻く環境も大きく変化している。米国ではバイデン政権下で気候変動対策が強化され、EUでは排出量取引制度の改革が進められている。中国では2020年に全国的な排出量取引制度が導入され、2021年には実際の取引が開始された。韓国では2050年炭素中立目標の設定とともに、排出量取引制度の改善が図られている。これらの動向は、今後のパリ協定第6条の実施および国際的な市場メカニズムの発展に重要な影響を与えるものと考えられる。
