令和3年度補正水素、燃料アンモニア導入及びCCUS適地確保体制構築事業(アジア・トランジション・ファイナンスに関する調査事業)最終報告書
報告書概要
この報告は、アジアにおけるトランジションファイナンス(移行金融)の推進について書かれた報告書である。2022年9月に発行されたアジア・トランジション・ファイナンス研究グループの活動報告書であり、アジア地域における脱炭素化に向けた金融支援の重要性と課題を論じている。
パリ協定やCOP26気候サミットにより世界的な脱炭素化の取り組みが加速している中で、ゼロエミッション活動に焦点を当てたグリーンファイナンスだけでなく、段階的な脱炭素化を支援するトランジションファイナンスの重要性が高まっている。特にアジア地域では、継続的な工業化とエネルギー需要の増大、化石燃料への依存度の高さ、再生可能エネルギーの地理的制約などの特殊事情により、公正で秩序ある移行を実現するためのトランジション活動が極めて重要となっている。
研究グループには、アジアおよびグローバルな銀行19行を中心として、開発銀行、輸出信用機関、公的機関、金融協会など計42の機関が参加している。4回の学習セッションと9回の研究グループセッションを通じて、トランジションファイナンスに関する課題の特定と解決策の検討を行った。主要な課題として、異なる基準やタクソノミーの存在、評価の複雑性と参考資料の不足、地域特有の参考情報の欠如、実績事例の限定性が挙げられている。
これらの課題を踏まえ、政府および関係者に対する支援措置として、アジア向けのセクター別・国別の脱炭素化パスウェイとテクノロジーロードマップの作成、公正で秩序ある移行の考慮、トランジションファイナンスのパイロットケースへの支援、地域・国家タクソノミーの相互運用性の促進、カーボンクレジットの役割に関するガイドラインの作成、中小企業向けの移行支援の開発、移行技術に関連するスキルの習得と開発の促進を提案している。
