令和3年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等委託事業(エネルギー政策動向分析・調査支援事業)報告書
報告書概要
この報告は、日本の令和3年度におけるエネルギー需給構造高度化対策と世界のエネルギー転換動向について包括的に分析した政府委託調査報告書である。
まず、諸外国におけるエネルギー政策動向として、パリ協定以降の脱炭素化への取り組みが各国で進展している現状を分析している。特に発電部門の脱炭素化において、外部費用を含む発電コストの評価が経済合理的なエネルギー政策立案に重要な意義を持つことが示されている。英国政府の発電コスト評価では、均等化発電原価に加えて電力システム全体への影響を考慮した統合費用の評価が行われており、火力発電では系統への貢献によるコスト低減が認められる一方、再生可能エネルギーでは出力変動や送電網への追加的なコストが評価されている。米国エネルギー情報局も同様の手法で電源の価値評価を実施している。
中長期のエネルギー需給見通しに関しては、マクロ経済モデルとエネルギー需給モデルを統合した計量経済型モデルによる分析手法の改善が検討されている。このモデルは経済規模や世帯数などのマクロ変数に基づく関数を実績データから推計し、将来のエネルギー需給構造を予測するものである。産業部門、民生部門、運輸部門それぞれについて詳細なモデル構造が構築され、技術導入評価のための積上型技術評価モデルも組み込まれている。
再生可能エネルギーポテンシャル試算では、メッシュ別の陸上太陽光・風力発電ポテンシャルと均等化発電原価別太陽光発電の試算が実施されている。これらのデータ整備により、地域別の再生可能エネルギー導入可能性が定量的に評価できる基盤が構築されている。
世界と日本のエネルギー転換シナリオ分析では、米国、英国、欧州連合、ドイツ、中国、インド、日本の各国・地域における脱炭素化政策と温室効果ガス削減目標への取り組みが詳細に分析されている。各国とも2050年カーボンニュートラル達成に向けた具体的な政策パッケージを展開しており、再生可能エネルギーの大幅拡大、電化推進、水素・アンモニア活用、炭素除去技術の導入等が共通の戦略となっている。
最後に、エネルギー関連統計データの収集・分析として、日本のエネルギー基本計画の英訳作業、パブリックコメントの整理、産業分析、化石燃料輸入分析、エネルギー投資額分析が実施されている。特にエネルギー投資額分析では、2050年カーボンニュートラル達成に向けて脱炭素技術、省エネ技術、再生可能エネルギー等への大規模な投資が必要であることが定量的に示されており、年間投資額は2050年に48.1兆円に達すると試算されている。
