令和3年度補正デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業(アーティスト等と連携した地域ブランドの確立に係る実証事業)に関する報告書
報告書概要
この報告は、森林と京町家を舞台としたアート活動による未活用空間の価値創造と持続可能な活用システム構築について書かれた報告書である。
日本では森林の間伐不足や京町家の空き家増加といった構造的課題が存在している。本事業では、これらの未活用空間を「森林」と「京町家等歴史的建築物」に定め、アーティストの表現機会拡大を図る新たな仕組みづくりを実証した。具体的には、京都市有「合併記念の森」と有斐斎弘道館を舞台に、工芸をテーマとした連続性のあるアート活動を展開し、ふるさと納税型クラウドファンディングを活用した持続可能な支援モデルの構築を目指した。
実証事業では、既存ステークホルダーの縦割り構造、ソフト面の支援制度不足、継続的収益源の欠如という三つの根本的課題を特定した。これらの解決策として、自治体の産業観光局と文化市民局の連携促進、ふるさと納税制度を活用したアート活動支援の仕組み化、アート作品販売収益の再投資システムを提案した。
展覧会実施においては、アーティストが現地の人々や環境との深い関わりを通じて作品制作を行い、美術館とは異なる公共空間ならではの表現可能性を探求した。森林空間では自然環境に晒された作品が新たな視点を生み出し、京町家では歴史的建築の作法と現代アートが共鳴する展示が実現された。この過程で、中間支援組織による現地との橋渡し機能と、物理的制作環境の提供が不可欠であることが明らかになった。
アセスメント結果では、作品購入が自然環境や歴史的建造物の保全への寄付となる場合、64%が購入を検討すると回答し、継続的な経済循環への可能性が示された。また、展覧会を契機として初めて当該地域を訪れた人が49%に達し、アート活動による人流創出効果も確認された。これらの成果を受けて、令和5年度以降「京都みどりプロジェクト森林の応援団づくり事業」にアート活動を初めて掲載する協議が開始されており、分野横断的な経済循環システムの実現に向けた具体的な歩みが始まっている。
