令和3年度補正デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業(欧州市場における日本文化資本を活用した海外需要獲得に関する調査検討事業)報告書

掲載日: 2023年9月22日
委託元: 経済産業省
担当課室: 商務・サービスグループクールジャパン政策課
元の掲載ページ: 掲載元を見る
令和3年度補正デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業(欧州市場における日本文化資本を活用した海外需要獲得に関する調査検討事業)報告書のサムネイル

報告書概要

この報告書は、欧州市場における日本の文化資源を活用した海外需要獲得に関する調査について書かれた報告書である。

本調査は、令和3年度補正デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業として実施され、欧州市場への日本企業進出の実態と課題を把握することを目的としている。EU27カ国と英国を含む欧州は5億人の巨大市場であり、2018年の日EU戦略的パートナーシップ協定により世界最大級の自由経済圏が形成されたとされる。

調査では、欧州における日本文化の歴史的変遷、販路開拓手法、スタートアップ企業の事例収集という3つの手法を用いている。特に、アムステルダムのトロペン博物館で開催された「クールジャパン」展を通じて、19世紀後半のジャポニズムから現代のクールジャパンまでの連続性が明らかにされた。日本の伝統文化と現代ポップカルチャーが一貫した文化的DNA を持つことが示されている。

欧州市場における日本文化の受容について、浮世絵からマンガ、サムライからガンダムに至る文化の継承性が指摘されている。「クール」の概念は、マイルス・デイビスの音楽や英国のクール・ブリタニア戦略に源流を持つが、日本のクールジャパン戦略は模倣的側面があったと分析されている。伝統的規範であるカノンと革新的な二次創作であるファノンの関係性が、文化発展の鍵となることが述べられている。

販路開拓については、アムステルダムのMONO JAPANやベルリンのNIONなどのハブ機能を持つ組織が重要な役割を果たしているとしている。独立小売業の変革を推進するアンカーストアの成長や、家業イノベーション・ラボによる伝統産業の革新支援などの事例が紹介されている。これらの取り組みは、日本企業の欧州進出における言語・文化の違いや取引環境の課題解決に貢献している。

欧州のスタートアップ環境については、ベルリンを中心とした技術革新の動向が分析されている。GDPR規制下でのWeb3.0への期待、気候変動対応のグリーンスタートアップ、循環経済への取り組みなどが注目されている。日本のスタートアップが欧州進出を図る際には、現地のエコシステムとの連携が重要であることが指摘されている。

最終的に、日本の中小企業やスタートアップが欧州市場で成功するためには、伝統文化の革新、デジタル技術の活用、現地パートナーとの協力が不可欠であるとまとめられている。