令和3年度補正カーボンニュートラル・トップリーグ整備事業委託費(カーボン・クレジット市場の技術的実証等事業)最終報告書
報告書概要
この報告は、カーボン・クレジット市場の技術的実証等事業について書かれた報告書である。令和3年度に株式会社東京証券取引所が実施した事業では、2050年カーボンニュートラル実現に向けた市場メカニズムの構築を目的として、J-クレジットの取引実証とGXリーグ超過削減枠の模擬売買という二つの技術的実証が行われた。J-クレジットの取引実証では、透明性の高い市場として売買、価格公示、資金決済及びクレジット振り替え機能について検証が実施され、取引の流動性向上、適切な価格シグナル機能、多様なクレジットの付加情報流通、安全で利便性の高い取引システム構築という四つの観点から評価された。GXリーグ超過削減枠の模擬売買については、賛同企業を対象として取引体験を通じた今後の制度設計への活用が図られた。さらにマーケットデザインという経済学的観点から、クレジットが従来の金融商品と異なる財としての性質を持つことを踏まえ、市場流動性向上に適したマッチング手法の研究や、脱炭素投資を促進する排出量取引市場における政府関与のあり方が検討された。諸外国調査では、欧米やシンガポール等のカーボン・クレジット市場整備事例を参考に、法律面・技術面からの分析が実施され、クレジット口座簿との連携や運用における論点整理が行われた。報告書では、クレジットの透明性向上が課題とされており、付随的価値への着目やレジストリ間連携によるデータ一元管理、デジタル化促進の必要性が指摘されている。