令和3年度補正インド太平洋地域におけるサプライチェーン強靱化事業(地域大サプライチェーンアーキテクチャー構築検討調査)デジタル時代におけるグローバルサプライチェーン高度化研究会報告書(案)
報告書概要
この報告は、デジタル時代における日本とASEAN諸国のグローバルサプライチェーン高度化について書かれた報告書である。経済活動のグローバル化が進展する中で、日本が持続的な発展を遂げるためには、大きな市場ポテンシャルを有するASEAN各国との経済関係深化が重要な政策課題となっている。現在の企業事業活動を取り巻く環境は「不安定化」「加速化」「複雑化」という三つの構造的変化が確認されており、地政学リスクや疾病リスクなどによって企業活動が停止・縮小に追い込まれる事案が増加している。これらの課題解決策として、デジタル技術を使ったサプライチェーンの可視化や上流も含めたデータ共有・連携が着目されている。研究会では、データ活用のユースケース、データ共有の基盤・仕組み、データ活用・共有のルール、データ活用を支えるトラストの四つのコンポーネントからなるデジタルアーキテクチャーのフレームワークを設定した。産業とサプライチェーンのデジタル化は、既存事業モデルの強化と新たな事業モデルの創出という二つの側面から進展している。具体的には、デジタルによる事業経営の高度化や企業間の連携強化、製造のサービス化やリテールの製造業化といった新たなモデルが検討されている。欧州ではGAIA-Xの取組やCatena-Xなどの地域大での企業間データ共有イニシアチブが発展しており、日本・ASEAN地域においても同様の枠組み構築が求められている。報告書では、GHG排出量可視化とサプライチェーン構造可視化という二つの重要なユースケースを特定し、これらの実現に向けた課題と打ち手の方向性を整理している。今後は官民一体となって、ASEAN展開に意欲的なサービスプロバイダーを中心としたパイロットユースケースを組成し、横串でのデータ共有の枠組み整備を進めることが重要である。
