平成31年度産業経済研究委託事業(DXを促進するためのシステムガバナンスに関する調査研究)報告書(デジタルガバナンスに関する有識者検討会取りまとめ)
報告書概要
この報告は、デジタルガバナンスに関する有識者検討会での議論をまとめた報告書である。
2019年5月から8月にかけて5回開催された検討会では、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を継続的かつ柔軟に実現するためのデジタルガバナンス・コードの策定について議論が行われた。検討会の主要な目的は、2025年の崖として知られるレガシーシステム問題の克服とDXの本格的な展開を支援することであった。
議論の中心となったのは、デジタルガバナンス・コードの位置づけについてである。委員からは、投資家向けだけでなく経営者向けとしての性格も重要であり、経営者自らがステークホルダーに対して具体的な取り組みを説明できる仕組みが必要だという意見が出された。また、従来のITガバナンスとデジタルガバナンスの違いを明確にし、攻めのDXとセキュリティ対策のバランスを取ることの重要性が指摘された。
検討会では、デジタルガバナンス・コードをガバナンス面とマネジメント面に分けて検討が進められた。ガバナンス面では経営者による統治体制の確立に焦点を当て、マネジメント面では具体的な実行プロセスの評価が議論された。委員からは、単にプロセスを評価するだけでなく、最終的なアウトプットや成果を重視すべきだという意見が多数出された。
成熟度評価については、レベル1から3までの段階的な評価軸を設定し、「Comply or Explain」の概念を導入することで、画一的な評価ではなく企業の個別事情に応じた柔軟な評価を可能とする方針が示された。これにより、企業は設定されたプラクティスそのものを実施していなくとも、それに準ずる取り組みを客観的に説明できれば評価されるという仕組みが提案された。
