令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(横断的な技術情報を活用したイノベーター分析事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、先端技術におけるイノベーターの特定と動向分析について書かれた報告書である。米中のハイテク覇権争いが激化する中、安全保障に影響する最先端技術の流出防止と技術人材の把握管理が重要な課題となっている。報告書では、技術者の引き抜きやスタートアップ買収が激化する人材獲得競争において、高い技術力を持つイノベーターが組織の技術者を惹きつける現象に着目している。また、イノベーターが新たに取り組む技術分野が次代の覇権争いを左右する重要技術となる可能性を指摘している。
分析対象として量子コンピュータ・量子通信、脳波応用・感性工学、仮想現実技術の3領域を選定した。量子コンピュータは量子力学の重ね合わせ現象を利用した超高速計算技術であり、2011年にカナダのD-Wave Systems社が最初の製品を発売した。量子通信では中国が量子衛星「墨子号」を打ち上げ、セキュリティの高い量子暗号通信の実現に向けた研究が進展している。脳波応用・感性工学では、脳機械インターフェイス技術やニューロマーケティングなどのビジネス活用が注目されている。
分析手法として、特許データとグラント(研究助成金)データという異質なイノベーションデータを統一的に評価する新しい手法を開発した。テキストデータから定量的評価指標を作成し、優れた研究や技術を特定してその傾向を把握することができた。量子コンピュータ分野では基礎研究が中心で社会実装には時間を要するものの、量子テレポーテーションによる新しい量子コンピュータの可能性を見出した。脳波応用分野では医療以外の事業化も進展しており、基礎研究と事業化が並行して進んでいる状況が明らかになった。
