令和元年度中小企業実態調査事業(エンジェル税制活用による地方ベンチャー企業活性化に係る調査委託事業)報告書
報告書概要
この報告は、エンジェル税制活用による地方ベンチャー企業活性化について書かれた報告書である。我が国の開業率が諸外国と比較して低水準である中、個人の現預金をベンチャー企業への投資に結びつけることで民間資金循環を促進し、資金需要旺盛なベンチャー企業を支援することが重要な課題となっている。政府は個人投資家による創業間もないベンチャー企業への投資に対し税制優遇措置を講じるエンジェル税制を実施しているが、都市部では利用実績が増加傾向にあるものの依然として低水準に留まっており、特に地方のベンチャー企業においては利用実績が少なく、個人投資家によるリスクマネー供給が十分に行われていない現状がある。
調査は文献調査、中小・ベンチャー企業向けアンケート調査、個人向けアンケート調査、ヒアリング調査の手法により実施された。日米欧におけるベンチャー投資の動向では、各国ともベンチャーキャピタルによる投資額は近年増加傾向にあり、日本の成長率は高いものの、米国や欧州と比べると投資額には大きな開きがある。投資規模を経済活動比でみると、日本は0.05%で米国の0.64%と比べて十分の一以下となっている。投資のステージ別構成では、日本でもシードやアーリーステージでの投資が欧米と遜色ない割合になりつつあるが、創業直後のリスクマネー供給は十分ではないという指摘がある。
個人向けアンケート調査では、投資や資産運用に関心がある人が53.6%、経験がある人が50.4%であった。エンジェル税制の認知度は6.1%と低く、実際に利用したことがある人は認知者の5.2%に留まっている。ベンチャー企業への投資における問題として、起業家との接点がない、投資のための資金がない、投資先を評価することができないなどが挙げられ、少額でも投資できる環境や手続きの簡便化が求められている。
