令和元年度産業保安等技術基準策定研究開発等事業(令和元年台風15号による送配電設備の事故原因の調査・分析等に係る調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、令和元年台風15号による送配電設備の事故原因調査・分析について書かれた報告書である。
台風15号では千葉県内で約16日間の長期停電が発生し、鉄塔の倒壊や多数の電柱の折損・損壊事故が生じた。本調査では、これらの設備被害の原因究明と今後の被害軽減策を検討するため、鉄塔及び電柱に係る電気設備の技術基準のあり方について包括的な分析を実施した。
調査内容は、送配電設備の技術基準等の現状調査、鉄塔及び電柱の事故原因調査、ワーキンググループでの検討対応、技術基準のあり方検討の4つの柱で構成されている。技術基準の現状調査では、電気事業法第39条に基づく技術基準の改正内容や設定根拠を整理し、各電力会社の設計基準や国内外の関連基準・規格を調査した。
事故原因調査では、倒壊した鉄塔2基と電柱1,996本を対象とし、台風15号の概要分析、被害状況の把握、損壊原因の詳細調査を実施した。鉄塔については、千葉県君津市の倒壊現場で現地調査を行い、風況シミュレーションや倒壊メカニズムの解析を通じて原因を分析した。電柱については、損壊原因を分類し、二次被害の影響や連鎖倒壊の実態を調査した。
技術基準のあり方検討では、鉄塔について地域の実情を踏まえた基準風速の適用や特殊地形への対応を検討し、電柱については木柱の安全率引上げ、鉄柱への地域風速適用、連鎖倒壊防止策を検討した。今後の対応として、電力会社による総点検と並行した特殊箇所の基準化、地域風速の基準反映、電柱の基準見直しを段階的に実施するロードマップが提示された。これらの検討結果は、自然災害の頻発化・激甚化に対応した送配電設備の技術基準強化に資する重要な知見となっている。
