令和元年度産業経済研究委託事業(経済産業政策・第四次産業革命関係調査事業費(我が国及び主要国での企業結合審査等における経済分析の活用等に関する調査))調査報告書
報告書概要
この報告書は、我が国及び主要国における企業結合審査等における経済分析の活用等に関する調査について書かれた報告書である。
第四次産業革命の進展により、日本では従来とは異なる新たな商品・サービスの創出が進み、業種の壁が低くなるなど経済産業構造の転換期を迎えている。このような環境下で、従来の市場シェアや市場集中度を重視する企業結合規制から脱却し、経済学の知見に基づいた競争評価手法として経済分析を重視する実務が日本及び欧米で定着しつつある。複数企業による業務提携も増加・多様化しており、競争に対する制限効果と促進効果を適切に評価する必要性が生じている。
本調査報告書は、企業結合編と業務提携編に分かれて構成されている。企業結合編では、各国・地域の企業結合規制の歴史的変遷と比較を行い、市場画定や市場シェアの重要性が相対的に低下し、実証的な経済分析の重要性が高まっていることが確認された。欧米では当事会社と当局の双方が高度な経済分析を行い、その妥当性を議論する活発な循環が成立している一方、我が国では経済分析の実施体制や審査結果の公表等に課題があることが示唆された。
業務提携編では、主要国・地域における業務提携の規制状況を比較し、我が国においては業務提携に関するガイドラインが明示的に作成されておらず、企業からみた審査の不確実性が存在することが明らかになった。また、明確なセーフハーバーの設定についても米国・欧州との違いが見られた。
企業実務への示唆として、企業結合審査においては競争評価及び経済分析の重要性を認識し、市場シェアの高さのみを重視しない姿勢が求められる。今後の政策への示唆として、市場画定の位置づけの明確化、経済分析に係る審査結果の積極的開示、専門家への外部委託も視野に入れた分析体制の充実等が挙げられている。
