令和元年度質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業トルクメニスタン国における鉄道近代化事業調査報告書
報告書概要
この報告は、トルクメニスタン国における鉄道近代化事業について書かれた報告書である。経済産業省が実施した令和元年度の事業実施可能性調査において、トルクメンバシからアシガバットを経てトルクメナバットまでの東西回廊1,176kmを対象とした鉄道近代化計画が検討された。調査では国の鉄道セクターの現状と課題を把握し、既存路線の現況調査と電化を中心とする近代化計画のための情報収集を行った。トルクメニスタンは人口約580万人を有し、天然ガスを中心とする資源に依存した経済構造となっている。電力供給は豊富な天然ガス資源により安定しており、送電網も整備されている。対象路線は単線非電化区間であり、土木施設の老朽化や軌道の不具合、車両の老朽化などの課題を抱えている。需要予測では将来的な貨物輸送量の増加が見込まれ、特にトランジット貨物の拡大が期待される。近代化計画では複数の代替案を検討した結果、段階的整備により電化と部分複線化を進める方針が選定された。第一段階ではアシガバット周辺区間とマリー周辺区間を対象とし、電化による輸送能力向上と運行効率化を図る計画である。環境社会配慮調査では自然環境への影響は限定的であり、既存鉄道用地の活用により土地収用は最小限に抑えられる見込みである。事業実施には複数の融資機関による資金調達が必要であり、日本企業の優位性を活かした車両や信号システムの導入が期待される。実現に向けた課題として、詳細な技術検討、複数財源による資金調達、鉄道運輸庁の財務改善、関係機関との協議、保守管理体制の構築が必要である。
