令和元年度戦略的基盤技術高度化支援事業(地域におけるものづくり中小企業デジタル化の面的展開に関する調査事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、地域におけるものづくり中小企業のデジタル化を面的に展開するための調査結果をまとめた報告書である。アクセンチュア株式会社が令和元年度戦略的基盤技術高度化支援事業の一環として実施し、会津産業ネットワークフォーラム会員企業73社を対象とした複数回の検討会を通じて、中小製造業のIT化・自動化・共通化・連携の実態を調査分析している。
調査では製造業のデジタル化実現に向けて4つのフェーズからなるロードマップを策定し、Connected Industriesのコンセプトを完全体現するには段階的アプローチが必要であることを明確化した。特に比較的企業間で特色を際立たせる必要のない非競争領域から優先的にデジタル化を推進し、企業を跨いだ標準化を企業間連携の礎とする方針を示している。製造系企業の業務を分析・計画系業務、基幹・周辺業務、実行・制御の3つのレイヤに整理し、現状のシステム化度合いを4つのケースに分類して、各企業の状況に応じた導入アプローチを検討した。
システム化方針として、基幹業務レイヤにはERP(統合基幹業務システム)をベースとした標準業務テンプレートを適用し業務間連携を実現し、分析・計画系レイヤにはデータ分析基盤を配置してERP と連携する構成を提案している。実行・制御レイヤについては個社毎の設備・ラインの実態に応じたオプション対応とするが、製造実行管理ツール(MES)については汎用性を持った仕組み構築の余地があるとしている。
パイロット企業として従業員200人規模の量産加工系製造企業を選定し、業務・システムテンプレートを活用した現行システムとのギャップ分析を実施した。その結果、10年間で生産性向上率、キャッシュフロー改善、雇用創出において相当量の効果が期待できることを数値化して示している。しかし企業規模別の採算性分析では、大規模企業は優位性を保てるものの、中小規模企業ではITコスト面で現状運用より採算がマイナスとなる課題も浮き彫りとなった。今後の展開に向けては、取り組み効果の確実な実証、契約スキームの検討、効果的な販促方法の検討という3つの重要課題への対応が必要である。
