令和元年度中小企業実態調査事業(中小企業のITツール等導入プロセスにおけるナッジ活用の可能性に関する調査)
報告書概要
この報告は、中小企業のITツール等導入プロセスにおけるナッジ活用の可能性について書かれた報告書である。令和元年度に経済産業省中小企業庁の委託により実施された調査研究の結果をまとめたものである。
調査は三段階で構成されており、まず中小企業のITツール等導入プロセスの実態把握を目的とした先行文献調査、ヒアリング調査、実態調査を実施した。これらの調査により、中小企業のデジタル化における課題と行動要因を特定し、効果的な介入手法の仮説を構築した。
次に、ナッジの手法を活用した複数施策の比較実験を行った。具体的には、行動経済学のEASTフレームワーク(Easy、Attractive、Social、Timely)に基づいて、メルマガとバナー広告による実証実験を実施した。メルマガ実験では40パターン、バナー広告実験では4パターンの異なるメッセージを作成し、クリック率を測定して効果を検証した。
実験結果では、「認知の入口」向けメルマガにおいてSocial要素の「使っていないのはあなただけ」やTimely要素の「今やらないと」「今のうちに」といった表現が効果的であることが判明した。一方、広くビジネスパーソンにリーチするバナー広告では、Attractive要素の「売上が4倍」という具体的な成果を示す表現が高い効果を示した。
これらの実証結果に基づき、中小企業のデジタル化度合いとIT導入プロセスの段階を軸とした4象限モデルを構築し、それぞれの段階に応じた政策提言を行った。提言内容には、経営者同士のコミュニティ形成、自己診断ツールの提供、継続的伴走支援体制の構築、補助金・税制優遇による投資負担軽減などが含まれており、公的サービスと民間サービスの役割分担を明確にした包括的な支援策を提示している。
