令和元年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(水素導管供給システムの安全性評価事業(水素導管の大規模損傷リスク評価))調査報告書
報告書概要
この報告は、水素導管供給システムの大規模損傷時における安全性評価について書かれた報告書である。産業技術総合研究所が令和元年度に実施した調査研究により、水素導管が損傷した際の管内への大気混入挙動と火炎伝播挙動を実験的に調査し、水素供給停止後の潜在的リスクを評価している。実験では呼び径150Aおよび50Aの鋼管を用い、直径10mmと50mmの漏えい孔、さらに全破断を模擬した条件下で、水素放出後の供給停止時における管内現象を温度計測、濃度計測、可視化観測により詳細に分析した。大気混入挙動の結果では、配管径に対して漏えい孔径が十分小さい場合を除き、管内に大容量の可燃性混合気が形成されることが判明した。特に50A配管では10mm径の孔でも数分後から可燃性濃度に達し、50mm径や全破断では直ちに空気が流入して広範囲に可燃性混合気が拡散した。火炎伝播挙動では、10mm径の孔において着火後の水素供給停止後も90分以上火炎が持続し、50mm径では40分から56分間持続することが確認された。全破断条件では火炎が管内に侵入し約80cmまで到達した後約30秒で消失した。これらの結果は、水素の可燃濃度範囲が広く拡散しやすい特性により、供給停止後も長時間にわたり可燃性混合気や火炎が持続する可能性を示している。特に水素火炎は屋外では視認困難であるため、火炎が存在していても検知できない場合があり、復旧作業時の予混合爆発や火炎噴出のリスクが存在する。この調査結果は、水素導管損傷時における適切な予防策と作業手順の設定、離隔距離を含む避難計画、ガス遮断装置の配置、不活性ガス置換方法の確立等、水素導管供給システムの安全対策検討に重要な技術的知見を提供するものである。
