令和元年度国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費(温室効果ガス排出削減のためのカーボンプライシング等の政策手法に関する調査)報告書
報告書概要
この報告書は、温室効果ガス排出削減のためのカーボンプライシング等の政策手法について書かれた報告書である。
カーボンプライシングは炭素排出に価格を付けることで排出削減と低炭素技術への投資を促進する制度で、明示的カーボンプライシングと暗示的カーボンプライシングに大別される。世界では1990年代から炭素税と排出量取引制度の導入が進んでいる。炭素税は新古典派経済学の理論に基づく経済的手法であり、すべての排出者が税率に応じた限界削減費用まで排出を抑制することで社会全体の削減費用最小化を目指している。
調査対象各国の炭素税制度は、課税対象、税率、減免措置において大きく異なっている。欧州諸国では財源調達と所得再配分を目的として導入され、税収は一般会計に繰り入れられている。課税段階はエネルギーの輸入・生産段階または購入・消費段階のいずれかが採用され、エネルギー自給率などの事情により選択されている。各国は環境政策目標と政治経済的影響を考慮し、様々な優遇・特例・免税措置を設けているため、炭素税本来の効率性が損なわれている。
排出量取引制度については、EU-ETSを中心とした国際的な制度展開が進んでいる。世界各国でカーボンプライシング制度導入の動きが活発化しており、OECD や世界銀行などの国際機関が導入促進を支援している。日本においては石油石炭税が炭素税的側面を持ち、その税収は省エネルギー対策やエネルギー安全保障対策に充当されている。さらに、企業が独自に CO₂排出に価格付けを行うインターナルカーボンプライシングの導入も進んでおり、多様な主体による温室効果ガス削減への取り組みが展開されている。
