令和元年度エネルギー需給に関する統計整備等のための調査(エネルギー関連統計の改善・整備等に向けた調査)報告書
報告書概要
この報告書は、経済産業省資源エネルギー庁の委託により実施されたエネルギー関連統計の改善に関する調査について記載された報告書である。2020年度における総合エネルギー統計の精度向上を目的として、エネルギー源別標準発熱量の改訂とエネルギー関連統計の問題点調査が実施された。
標準発熱量改訂においては、総合エネルギー統計で各種エネルギー源を統一的に扱うために必要な発熱量基準値を、約5年ごとに見直すこととしており、2018年度版から適用する改訂値案を作成した。改訂作業では、需給規模や使用者意見を参考に主要エネルギー源を選定し、業界団体からの実測データ提供を受けて算定を行った。日本鉄鋼連盟、電気事業連合会、日本ガス協会、天然ガス鉱業会等の協力により、コークス用原料炭、輸入一般炭、輸入天然ガス、国産天然ガスなどの発熱量と炭素排出係数を実測値に基づいて算定した。また、近年の需給状況変化に対応して、バイオディーゼルとバイオガスを新設し、亜炭・褐炭や炭鉱ガスなど需給実績のない項目を廃止した。
統計間重複や統計欠如等の調査では、エネルギーシステム改革により電力事業とガス事業の垣根がなくなったことで生じた統計上の問題点を調査した。電力調査統計の雑用分と他統計との重複排除、ガス製造の電力消費、地域別ガス消費量、運輸部門のガソリン消費量統計などの課題について検討を行った。特に電力調査統計の雑用分については、改正電気事業法施行後に製造業者や小売業者が電気事業者となったことで他統計との重複が生じており、ヒアリング調査により重複分を排除する改善を実施した。
総合エネルギー統計検討会を2回開催し、標準発熱量改訂案と統計改善策について専門家による検討を受けた。第1回検討会では標準発熱量改訂について承認を得るとともに、前回検討会後の改善事項の報告と今後の検討課題について議論された。第2回検討会では追加的な検討事項について議論が行われた。改訂値適用による影響として、輸入一般炭やLNGの発熱量上昇により事業用発電の転換効率が僅かに悪化する一方、炭素排出係数の下落により全体のCO2排出量は189万トン減少することが確認された。今後の課題として、オイルコークスの追加調査、農林水産業の消費量推計方法改善、太陽光発電量把握方法の検討などが挙げられている。