令和元年度石油・ガス供給等に係る保安対策調査等委託費(安全普及促進事業(ガス保安広報のあり方に関する調査))に関する報告書
報告書概要
この報告は、ガス保安広報のあり方に関する調査について書かれた報告書である。2018年に発生した都市ガス403件、LPガス206件の事故のうち、需要家や一般消費者等が起因となる事故が都市ガスで約4割、LPガスで約3割を占め、他工事による事故も都市ガスで約4割、LPガスで約2割を占めている状況を受けて実施された。これらの原因者はガス事業法等の規制対象外であるため、効果的な保安広報による周知と理解促進が必要とされている。
調査では、平成28年度から30年度の経済産業省及びガス関連団体による保安広報活動を整理し、委員会を設置して検討を行った。過去の広報では、ガスシステム改革のパンフレット広報、インターネット広報、屋外大型ビジョンによる広報を実施し、保安キャラクター「我須野一家」を作成して雑誌タイアップ広告や大学生向けコピー紙広告、高齢者向けビジョン広報などを展開した。また小学生向けコンテンツの開設や全国紙への広告掲載も行われた。
ガス関連団体9団体へのアンケート調査では、ガス機器使用中の換気の必要性を6団体が広報しているものの、近年増加傾向にある他工事事業者による事故防止を周知している団体は2団体にとどまった。家庭用一般消費者向け広報が87%を占める一方、業務用一般消費者向けが37%、外国人向けが22%と低い水準であった。広報媒体としてはホームページが最も多く利用され、SNSは1団体のみの利用であった。
他分野の広報活動調査では、医療ガス業界、電力業界、製品安全業界を対象とし、子供教育や年代別の分類化された広報手法、YouTube活用などの事例を確認した。過去のガス事故分析からは、家庭用燃焼器、業務用燃焼器、他工事事故、経年埋設管事故、自然災害など10分類の事故パターンを整理し、それぞれの周知対象と内容を明確化した。委員会では、より効果的な広報手法として行動経済学の「ナッジ理論」の活用が提案され、対象者を良い方向へ誘導する手法の検討が行われた。