令和元年度産業保安等技術基準策定研究開発等事業(グローバルサプライチェーンを背景とした輸入製品事故の減少に資する海外制度に係る動向調査)報告書
報告書概要
この報告は、グローバルサプライチェーンを背景とした輸入製品事故の減少に資する海外制度に係る動向調査について書かれた報告書である。日本において国産製品の重大製品事故は減少傾向にある一方で、輸入製品の事故件数に変化が見られず、その事故原因は製品起因と判断されたものが多いという現状がある。この背景には、急激に増加しているインターネット市場における製品の商取引や国際化が進んだサプライチェーンがあり、拡大・複雑化したサプライチェーンでは大規模な事業者でなくてもインターネットを通じて他国で製造された製品を売買することが可能になっている。
米国およびドイツの調査では、輸入製品の安全に向けた水際対策として、米国では安全確認書の義務付けや製品安全に関する輸入者自己審査プログラムの実施、貨物データを用いた輸入製品監視システムが運用されている。ドイツでは税関との連携体制が整備され、EU域内で統一された情報共有システムが構築されている。これらの国では輸入製品事故等の情報収集・共有制度も整備されており、関係機関間での連携による効果的な監視体制が構築されている。
中国の国内制度に関しては、製品品質の監督管理体制や事故情報管理の状況、規制当局による対処の実態について調査が行われた。中国では強制性標準による製品規制や欠陥製品リコール制度が整備されているが、輸出製品に対する品質管理体制には課題が存在していることが明らかになった。
日本における輸入製品事故に係る課題として、日本企業の検品・検査力や不正を自衛する力の不足傾向、トレーサビリティ確保の困難性と抑止力が効きにくい状況、オンライン市場のガバナンスの困難性が特定された。これらの課題に対して、他国における輸入製品事故対策の適用可能性が検討され、水際対策の強化や国際連携の推進、民間との協力体制の構築が提案されている。将来的な輸入製品事故対策として、規則・市場監視・賞罰制度・事故報告制度・事業者支援といった多角的なアプローチによる対策体系が提案されており、技術的検証や法的根拠整備を通じた継続的な改善が求められている。
