令和元年度内外一体の経済成長戦略構築に係る国際経済調査事業(諸外国等における経済の電子化を踏まえた課税の動向等に係る調査研究事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、経済の電子化(デジタル化)を踏まえた課税の在り方について諸外国及び国際機関等における議論と制度設計の状況を調査した報告書である。
経済のデジタル化により国境を越えた経済活動が進展する中、現在の国際課税システムは物理的施設の存在を重視しているため、主に消費者が存在する国での課税権が十分に確保できていないという問題が生じている。このような状況を受けて、OECD/G20は税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトを発足させ、デジタル経済がもたらす課税上の課題への対処を検討している。
OECD は1998年に電子商取引に関する5つの基本的課税原則(中立性、効率性、確実性及び簡素性、有効性及び公平性、柔軟性)を提案し、2013年にBEPS行動計画を策定してデジタル経済の課税問題を行動1として位置づけた。2019年以降は第1の柱と第2の柱という2つのアプローチによる新たな国際課税ルールの検討を進めており、第1の柱では多国籍企業の残余利益の一部を市場国に配分する仕組みを、第2の柱では軽課税国の所得に対する最低税率の設定を提案している。
各国の対応状況として、EUはデジタルサービス税(DST)の導入を検討し、英国、フランス、ドイツ、米国もそれぞれ独自の制度設計を進めている。英国は2020年4月にDSTを導入し、フランスも2019年にDSTを制定したが、ドイツはEUレベルでの合意を重視する姿勢を示している。米国は自国の巨大IT企業への影響を懸念し、一方的措置に対して関税報復の可能性を示唆している。
企業及び有識者へのヒアリング調査では、第1の柱について対象ビジネスの定義や閾値設定の複雑性への懸念が示され、特に消費者向けビジネスとデジタルサービスの区別の困難さが指摘された。DSTについては、各国独自の制度導入による複雑性や実務負担の増加、消費者への価格転嫁の可能性などの問題が挙げられた。第2の柱については、既存のCFCルールとの重複や制度の複雑性、二重課税の懸念が表明されたが、税負担の公平性確保という観点では一定の評価も得られた。
