令和元年度産業保安等技術基準策定研究開発等事業(電気設備被害情報共有システムの在り方にかかる調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、電気設備被害情報共有システムの在り方について検討された調査報告書である。災害時における電力設備の早期復旧への社会的要請が高まる中、災害の激甚化に伴う被害の深刻化・広域化により、被害状況の把握や復旧活動が困難になっている状況を受けて実施された。
調査では、電気事業者が有する電気設備被害情報の詳細について、関係者へのヒアリングやワーキンググループの開催により情報収集を行った。電気事業者への調査結果では、被害報告作業に多くの時間を要しており、市区町村の支障戸数や供給支障原因等の情報は提供可能であるが、支障率や緯度・経度情報については提供が困難な事業者が多い状況が明らかになった。また、システム間データ連携のためのAPIは一社を除いて具備されていない現状が判明した。
府省庁の災害情報システムとして、内閣府総合防災情報システム、総務省Lアラート、防災科学技術研究所SIP4Dなどとの連携可能性について調査を実施した。これらのシステムとの連携により、効果的な情報共有の実現が期待される。
システム化に向けた在るべき姿として、情報の収集、蓄積・分析、送信の三つの基本機能を定義し、プロトタイプを構築して試行的運用を実施した。試行運用では、ファイルアップロードやWebフォームでの情報登録、供給支障戸数の集計・グラフ化表示、他システムへの情報送信機能について検証を行い、これらの機能が適切に動作することが確認された。
情報収集方法については、短期的にはデータや写真のアップロード方式とホームページの自動収集機能が有効であるが、中長期的には電気事業者からの直接ファイル転送やAPI連携による自動化が必要である。ただし、これらの実現には関係者の関連システム対応と移行期間が必要であり、関係者間での認識共有と段階的な対応が重要である。