令和元年度鉱物資源開発の推進のための探査等事業(鉱物資源基盤整備調査事業(鉱物資源確保戦略策定に係る基礎調査))報告書
報告書概要
この報告は、令和元年度における我が国の鉱物資源確保戦略策定に係る基礎調査について書かれた報告書である。脱石油・省エネルギー社会の推進や地球温暖化対策を背景として、次世代自動車や5G通信インフラの普及に伴い、リチウム、コバルト、ニッケル、グラファイト、レアアース等の鉱物資源への需要が急速に拡大している状況が示されている。特にレアアース、タングステン、アンチモン等の鉱物資源は世界生産量の大部分を中国に依存しており、我が国の産業競争力維持および安全保障上の観点から、その調達リスクの軽減が喫緊の課題となっている。
調査対象として選定されたフッ素、リン、ガリウム、タングステン、パラジウムの5鉱種について、それぞれの需給構造、市場動向、供給リスクの詳細な分析が実施されている。フッ素は中国が世界生産の63%を占め、アシッドグレード蛍石の対中依存度が極めて高い状況である。リンは化学肥料用途が需要の8割を占め、中国やベトナムからの輸入に大きく依存している。ガリウムは日本が全量輸入に依存し、中国が世界生産の92%を占める構造となっている。タングステンは超硬工具用途が中心で、中国が世界生産の95%を占める一方、日本が最大の消費国である。パラジウムは自動車触媒用途が主要で、南アフリカとロシアが主要供給国であるが、投機的資金の流入により価格変動が激しい状況である。
各鉱種のリスク分析結果に基づき、鉱種特性に応じた安定供給確保政策が類型化されている。鉱山権益の確保、製錬所・中間製品製造工程への出資、省資源・代替材開発、リサイクル推進、備蓄などの既往対策に加え、脅威国を経由しないサプライチェーンの確保、資源開発・資源効率向上に関わる技術開発・投資支援、資源国政府との二国間交渉、多国間協力、技術伝承・技術者養成などの新たな対策が提言されている。特に中国やロシアといった脅威国への依存度が高い鉱種については、これらの国々に依存しない供給源の確保や中間加工工程の維持が重要であるとされている。
