令和元年度新エネルギー等の保安規制高度化事業委託調査(遠隔監視制御活用拡大のための要件等検討事業)報告書
報告書概要
この報告は、火力発電所における遠隔監視制御システムの活用拡大について書かれた報告書である。経済産業省が令和元年度に実施した調査事業として、汽力発電所および定格出力1万kW以上のガスタービン発電所における技術員による構内常時監視の代替要件を検討したものである。現行の電気設備技術基準省令第46条では、これらの発電所において技術員による構内での常時監視が義務付けられているが、IoTやAI等の新技術を活用することで遠隔監視による同等の保安レベルを確保できる可能性が示されている。
検討では、監視業務の高度化・遠隔化の方法として「巡視点検の高度化」と「監視所の遠隔化」という二つのアプローチが提示された。巡視点検の高度化では、構内巡視員を遠隔監視所に移動・集約することで省人化を図り、監視所の遠隔化では発電所構外からの常時監視を可能とする。これらの導入により、発電所の運用体制における選択肢と自由度の拡大が期待される。
技術的な代替要件として、センサー技術による現場状態の遠隔把握、サイバーセキュリティ対策、自動安全停止機能の確保などが重要な要素として整理された。同等性の検証においては、リスク評価による機能面での検証方法が示され、従来の保安機能と代替機能の比較検討が行われた。また、遠隔常時監視方式導入のための手続きや審査項目についても具体的な枠組みが提案されている。
本調査では電技省令第46条第一項の見直し案および新たな電技解釈第47条の2の法令文案が作成され、発電所構外からの同等の常時監視機能による代替を可能とする規制改正の方向性が示された。有識者による検討委員会では、規制強化にならないこと、構内監視と同等の水準を確保することの重要性が確認された。最終的に、発電事業者向けの「遠隔監視導入の手引き」が作成され、今後の制度整備に向けた基盤が整えられた。
