令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(空飛ぶクルマの実現に向けた地方公共団体及び事業者等の動向調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、空飛ぶクルマの実現に向けた地方公共団体及び事業者等の動向調査について書かれた報告書である。経済産業省製造産業局の委託により三菱総合研究所が実施した令和元年度の調査事業の結果をまとめたものであり、日本における空飛ぶクルマの社会実装に向けた官民の取り組み状況と課題を包括的に調査している。
調査は五つの主要項目から構成されている。まず地方公共団体による発表の場を活用した情報収集では、2019年8月に虎ノ門ヒルズで開催された構想発表会において、福島県、三重県、東京都、愛知県、大阪府の各自治体が空飛ぶクルマの活用構想を発表した。福島県は福島ロボットテストフィールドを中核とした試験飛行拠点としての役割を、三重県は離島や過疎地での生活支援や観光活用を、各都府県はそれぞれの地域特性を活かした実証実験や産業振興の構想を示している。
事業者のビジネスモデル調査では、国内外の企業による空飛ぶクルマの事業化検討状況を詳細に分析している。国内事業者としてはSkyDriveをはじめとするスタートアップ企業や航空会社、海外ではEHang、Lilium、Joby Aviationなど多数の企業の取り組みを調査し、ビジネスモデルの類型化を行っている。これらの分析に基づき、救急医療、観光、物流、都市間移動などの用途別に市場規模を算定し、2030年代の国内市場規模を推計している。
空の移動革命に向けた官民協議会の開催を通じて、産学官の関係者が一堂に会し、技術開発課題や制度整備について議論を行った。第5回協議会では各事業者のビジネスモデルが発表され、2023年の実用化開始に向けた具体的な取り組みが共有されている。また空飛ぶクルマの社会受容性に関する調査では、メディア報道やインターネット上の反応を分析し、国民への適切な情報提供とPR戦略の重要性を指摘している。調査結果として、空飛ぶクルマの実現には技術開発、制度整備、社会受容性向上の三つの側面での継続的な取り組みが必要であることが明らかになっている。
