令和元年度学びと社会の連携促進事業(IT導入による生産性向上の事例調査事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、令和元年度にIT導入による生産性向上の事例調査として、経済産業省が実施した事業についてまとめた報告書である。調査では全国15の中小企業において、IT導入補助金を活用したデジタル化の取り組みを詳細に分析した。
神奈川県の婦人服店「ゆうきや」では、地域密着型の小売店が越境ECサイト構築により海外市場に進出し、カップラーメンの海外販売「JAPAN NOODLES」を開始した。北海道の「伊藤家石材店」では、墓石のカラー図面作成システムを導入し、顧客への提案から設計までのリードタイムを50%短縮させた。熊本県の温泉旅館「蘇山郷」では、予約・調理・会計システムの連携により手書き業務を削減し、夕食時の注文を会計に自動連動させた。
大阪府の介護事業者「セルヴィス」では、スマートフォンを活用した訪問介護記録システムにより、記録用紙を1日70枚から0枚に削減し、入力作業時間を3分の1に短縮した。岡山県の「キミセ醤油」では、RPA(業務自動化ツール)を導入して顧客データ分析を効率化し、全員営業体制の構築を目指した。沖縄県の「兼城自動車整備工場」では、予約管理システムにより車検・点検の案内を自動配信し、顧客が希望する方法での連絡を可能にした。
これらの事例は、IT導入補助金が中小企業のデジタル化推進において重要な役割を果たしたことを示している。各企業は業界特有の課題に対応したITツールを選定し、業務効率化、顧客サービス向上、人材不足対策などの成果を実現した。特に手書き業務の削減、データ連携による重複作業の解消、自動化による省力化が共通する効果として挙げられる。調査結果は、適切なITツール選定と導入支援により、中小企業でも大幅な生産性向上が可能であることを実証している。
