平成31年度燃料安定供給対策に関する調査事業(潤滑油品質安定化調査・分析事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、自動車エンジン油の超低粘度潤滑油の品質評価方法の確立に関して書かれた報告書である。近年の省燃費化需要により低粘度および超低粘度潤滑油の利用が進展しているが、統一的な品質規格が存在しないため、粗悪品使用による故障や事故の可能性が懸念されている。本事業では一般社団法人潤滑油協会が資源エネルギー庁からの委託を受け、超低粘度潤滑油の品質評価方法の確立とガイドライン策定を目標とした調査研究を実施した。調査内容は低粘度および超低粘度潤滑油の実態調査と評価方法の検証・確立に分かれている。実態調査では国際的なエンジン油規格動向を調査し、ILSAC、JASO、ACEA規格の最新動向を把握した。特にILSAC GF-6規格が2019年に承認され、初めてSAE 0W-16グレードが制定されたことが注目される。国内自動車メーカーへのヒアリング調査により、各社が低粘度エンジン油の適用を進めており、SAE 0W-8やSAE 0W-16の採用が拡大していることが確認された。評価方法の検証では、Mo系添加剤を含む標準油GE108AとMo系添加剤なしのGE208を用いて、実験室的劣化と車両燃費試験による劣化後の省燃費性を評価した。モータリング燃費持続性試験では劣化により燃費向上率が低下することが確認されたが、車両燃費試験では16,000km走行後も燃費が維持または改善する傾向を示し、両試験間に明確な相関が認められなかった。既存のILSAC Sequence VIF燃費試験による評価では、超低粘度油の省燃費性評価は困難であることが判明した。これらの調査結果を基に超低粘度潤滑油の品質評価方法ガイドライン案を作成し、将来の国際規格化に向けた基礎的検討の継続が必要であると結論づけられている。
