平成31年度石油・ガス供給等に係る保安対策調査等委託費(LPガス容器の緊急遮断バルブ等の調査研究)に関する報告書
報告書概要
この報告は、LPガス容器の緊急遮断バルブ等の安全対策について書かれた報告書である。質量販売におけるLPガスの事故防止を目的として、高圧ガス保安協会が経済産業省からの委託を受けて実施した調査研究の成果をまとめたものである。
LPガス容器の質量販売では、屋台等での使用時にマイコンメータなどの安全装置を介さずに直接消費機器と接続されるため、容器転倒時等にガス漏えい事故が発生する危険性が高いことが課題となっている。本研究では、IoTを活用した高度安全対策として、集中監視システムとの連携による通信試験、スマートフォンを利用した容器管理方法、災害時の容器探索システムについて調査を実施した。
通信試験では、集中監視センターとの間で屋内外使用や移動時の通信性能を検証し、技術的課題を抽出した。災害対策では、無線通信やGPS機能を内蔵したデバイスを容器に取り付けることで、災害時の容器捜索の可能性を検討した。また、台風15号による千葉県での停電被害状況を分析し、災害時におけるLPガスの重要性を確認した。
緊急遮断バルブについては、振動、流量、圧力センサ等を搭載し、ガスの異常使用を検知した際に瞬時にガスを停止する機能を持つバルブを5台試作した。マイコンメータと同等の安全機能として、合計・増加流量遮断、使用時間遮断、感震遮断等の機能を実装し、FRP容器に取り付けて各種評価試験を実施した。
評価結果では、すべての項目で基本的な問題はないことを確認したが、流量遮断値の設定範囲が質量販売用調整器の容量と合わないこと、転倒時のロック部の強度不足、取り外し後の取扱い性、三脚の収納性などの技術的課題が抽出された。これらの課題に対して、基準化検討や設計改良の必要性が示された。緊急遮断バルブは屋台や一般住宅での活用が可能であり、通信機能により集中監視システムとの連動も実現できることが確認された。