平成31年度産業経済研究委託事業(第四次産業革命の進展等の経済社会構造の変化と税制に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、第四次産業革命による経済社会構造の変化が税制にもたらす影響について書かれた報告書である。
経済産業省の委託により実施された本調査では、AI・ロボット・バイオテクノロジーの活用を軸とする第四次産業革命の進展により、従来の経済社会が構造的に変化する中で、政府の財源調達や社会的資源再分配、景気調整という役割を担ってきた税制がどのように変化していくべきかを検討している。研究会では「第四次産業革命による経済社会構造の変化と税制に関する研究会」を設置し、森信茂樹座長をはじめとする学識経験者により、デジタル資本主義、非通貨取引、労働、無形資産、シェアリングエコノミーの5つのテーマについて議論が行われた。
デジタル資本主義については、取引費用がゼロに近づくことで限界費用が低下し消費者余剰が拡大するが、この余剰はGDPに含まれないため課税ベースとの乖離が生じるという課題が指摘された。非通貨取引では、地域通貨やLibraなどの仮想通貨の普及により、課税権と空間支配権の一致が困難になる可能性が議論された。労働分野では、プラットフォーマーの台頭によりギグエコノミーが拡大し、個人単位での新しい働き方に対する所得捕捉の困難さや、所得税の課税ベース縮小の可能性が検討された。また、シェアリングエコノミーにおいては、プラットフォーム経由の取引への源泉徴収制度の導入や個人利用者への概算経費控除の適用などが提言されている。
