平成31年度化学物質安全対策(化学物質管理に関する国際的な動向調査)報告書
報告書概要
この報告は、化学物質管理に関する国際的な動向調査について書かれた報告書である。経済産業省の委託を受けた一般財団法人化学物質評価研究機構が、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)及び国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質についてのロッテルダム条約(PIC条約)に関する国際会議の検討状況を調査した結果をまとめている。
調査は三つの主要な項目に分かれて実施された。第一に、POPs条約及びPIC条約に関する国際的な動向調査では、2019年に開催された両条約の第9回締約国会議(COP9)、第15回残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC15)、第15回化学物質検討委員会(PICCRC15)に有識者を派遣し、情報収集を行った。特にPOPs条約COP9では、ジコホル及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及び関連物質の附属書A(廃絶)への追加が決定され、国際的な協調による製造・使用等の廃絶に向けた取組みが開始されることとなった。また、新規提案物質であるデクロランプラス並びにその異性体、及びメトキシクロルについて、残留性及び生物蓄積性等の評価が実施された。
第二に、非意図的に含有する高懸念物質等に関する海外規制状況調査では、EU、米国、中国、韓国における制度の概要、運用フロー、基準値等について文献調査を実施した。これらの国々では、非意図的な副生成物として含有される高懸念物質に対する規制が存在するものの、その規制状況は国毎に異なることが確認された。化審法の第一種特定化学物質についても各国での規制状況や閾値の有無を調査し、国内外の規制措置の比較検討を行った。
第三に、情報伝達スキームの国際動向調査では、日本が2015年より運用を開始したchemSHERPAと類似の情報伝達スキームの動向を調査した。製品含有化学物質規制の導入や強化が世界各国で相次ぐ中、情報伝達の書式やルールの共通化・標準化が十分に進んでいないことが課題となっている。特に電気・電子機器業界や自動車業界では、多数の部品を扱うため規制対応が大きな負担となっており、BOMcheck(IPC-1752A)等の類似スキームとの互換性確保に向けた検討が必要である。また、欧米を中心としたサーキュラーエコノミーへの転換により、化学物質に関する情報伝達へのニーズが高まっていることから、関連する法規制や政策動向、国際標準化の動きについても調査を実施した。
