令和元年度産業経済研究委託事業(持続的な企業価値の創造に向けた企業と投資家の対話の在り方に関する調査研究)(開示、IR等についてのニーズ調査及びAI等を活用した企業価値評価の動向に関する調査)
報告書概要
この報告は、企業と投資家の対話の在り方および企業価値評価におけるAI活用について書かれた調査報告書である。野村総合研究所が令和元年度に実施した産業経済研究委託事業として、企業の開示・IR活動の実態とAI等を活用した新しい投資手法の広がりを調査している。調査は国内上場企業約3600社のCFO・財務管掌役員を対象としたアンケート調査と、機関投資家や情報ベンダーへのヒアリングによる文献調査により実施された。結果として、時価総額が大きい企業ほど経営層が関与するIRミーティングの回数が多く、対話に積極的であることが判明した。開示にかけるリソースは全体的に増加傾向にあり、特に大企業は各種記述情報やESG関連情報、英文開示に多くのリソースを割いている。一方、中小企業は開示府令等の改正対応に追われ、任意開示への対応に苦慮している状況が明らかになった。CFOの役割については、従来の経理業務責任者から経営戦略立案や投資家対話への関与が求められるように変化しており、特に小規模企業でその傾向が強い。資本コストについては全体の9割近くが経営で意識しているものの、小企業は経営層への浸透が課題となっている。AI活用については、アセットマネジメントワンやニッセイアセットマネジメントなど複数の資産運用会社が、ビッグデータや機械学習を活用した投資信託商品を展開していることが確認された。これらの取り組みは財務情報やテキスト情報の分析により銘柄選定やポートフォリオ構築の高度化を図っている。
