令和元年度産業経済研究委託事業(持続的な企業価値の創造に向けた企業と投資家の対話の在り方に関する調査研究)(株主総会に関する調査)成果報告書
報告書概要
この報告書は、持続的な企業価値の創造に向けた企業と投資家の対話のあり方について、特に株主総会制度に焦点を当てて調査研究を行った報告書である。企業が中長期的な価値を創造し持続的な成長を図るためには、資本市場からの資金供給が不可欠であり、投資家にとっても資本市場を通じた投資が長期的な金融資産の形成に寄与することが重要であるとの認識に基づいている。報告書では、発行企業と投資家の「緊張と協調」を伴う対話を通じて企業と投資家が望ましい関係を構築することの必要性を指摘し、この関係構築に向けた動きが国内外で活発化していることを述べている。しかし、わが国においては株主総会における議決権行使の形式化および硬直化等により会議体としての株主総会が非常に重くとらえられているのではないかとの指摘がある。また、機関投資家の効率的な電子的議決権行使が進んでいないという実態も存在している。こうした問題に対処するため、諸外国では実質株主の把握を容易にする制度整備や、議決権行使助言会社の規制に関する議論が進められており、バーチャルを活用した株主総会の開催方法の多様化も進められている。本調査では、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスにおける具体的な制度内容や議論の状況を明らかにし、これらの制度を活用する企業や投資家の動向や実務の変化について調査を行った。アメリカにおいては「所有と経営の分離」という理念の下で株主総会の権限が限定的なものとなっており、取締役会決議およびそれを前提として執行役によって決定される事項が多い。フランスにおいては第2次株主権指令の国内法化により株主権の強化が図られており、AMFが積極的に株主総会制度の改革に関与している。
