令和元年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業(イラク国南部油田の原油海洋払出システムの再構築に向けた海洋マスタープラン策定事業)調査報告書(英文)Project to Promote Overseas Sales of Quality Energy Infrastructure Systems in Fiscal Year 2019 Investigation of Possibility of Offshore Masterplan Establishment toward Reconstruction for Offshore Export Facility of Crude Oil
報告書概要
この報告は、イラク国南部油田の原油海洋払出システムの再構築に向けた海洋マスタープラン策定について書かれた報告書である。
イラク政府は国家財政強化策として石油輸出量を2019年現在の日量340万バレルから2023年までに日量600万バレルに増加させることを目標としている。南部イラクで生産される石油の95%以上が南部海洋石油輸出システムを経由して輸出されており、輸出増加にはシステムの改良と拡張が不可欠である。しかし、バスラ石油会社は既存老朽化施設の設計能力を下回る運転を余儀なくされている。
現在の海洋石油輸出システムは、ホール・アル・アマヤ石油ターミナル(KAAOT)とアル・バスラ石油ターミナル(ABOT)の2つの出荷ターミナルで構成されている。KAAOTは1963年と1974年に建設されたが、パイプラインの腐食により現在は石油輸出が停止している。ABOTは1974年に建設され、設計能力日量400万バレルに対し現在は日量160万バレルを輸出している。
施設検査の結果、大部分の構造物で腐食損傷が確認され、施設の老朽化が著しく進行していることが判明した。ABOTの基礎杭では海面付近に多数の腐食孔食が発見され、海底パイプラインは腐食による肉厚減少のため設計圧力より低い圧力で運転されている。
マスタープランでは、既存施設の更新・拡張・新設、海底パイプライン建設支援、運転保守支援、ICT技術導入、再生可能エネルギー導入の5つのプロジェクトが提案されている。日本企業の優位性として、新日鉄住金の防食システム、海洋工事技術、高品質鋼管製造技術が挙げられ、これらの技術がシステム再構築に貢献できると評価されている。財政計画では、イラクの財政状況を考慮し、JICA、JBICなどの日本の公的機関による融資スキームの活用が検討されている。
