令和元年度戦略的基盤技術高度化支援事業(中小企業技術基盤強化税制(国税)及び中小企業者等の試験研究費に係る特例措置(地方税)の効果に関する調査)報告書

掲載日: 2020年8月17日
委託元: 経済産業省
担当課室: 中小企業庁経営支援部技術・経営革新課
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令和元年度戦略的基盤技術高度化支援事業(中小企業技術基盤強化税制(国税)及び中小企業者等の試験研究費に係る特例措置(地方税)の効果に関する調査)報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、中小企業技術基盤強化税制(研究開発税制)の活用実態と効果について書かれた報告書である。

経済産業省中小企業庁の委託により、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が令和元年度に実施した調査であり、中小企業の研究開発税制利用状況の把握と同税制の経済効果推計を目的としている。我が国の新規産業創出、雇用機会拡大、地域経済活性化には中小企業の積極的な研究開発が必要であるが、財務基盤が脆弱な中小企業では研究開発投資に十分な資金を充当できない課題がある。このため中小企業が積極的に研究開発投資に取り組める環境整備として中小企業技術基盤強化税制が設けられているところである。

調査は中小企業4000社を対象としたアンケート調査(回収率19.0%)、税理士インタビュー及びアンケート、マイクロデータとマクロ経済モデルを用いた計量経済分析により構成されている。回答企業の52.0%が研究開発を実施しており、そのうち61.4%が研究開発税制を利用した経験を有している。制度を利用しない理由として、制度の存在を知らない、赤字決算が続いており税額控除制度が利用できない、手続きが煩雑である、控除額が少ないことが挙げられた。利用している制度では総額型が80%を超え、オープンイノベーション型は10%未満であった。

税理士調査では、研究開発税制の認知度は高いものの、顧客企業への積極的な推奨は限定的であることが判明した。推奨しない理由として、適用要件を満たさない、節税額が少額、手続きが煩雑、税務調査での否認リスクが挙げられた。マイクロデータ分析では、平成29年度税制改正による増減試験研究費割合に応じた税額控除率の増減制度のインセンティブ効果を検証した。マクロ経済モデル分析では、研究開発税制のGDP押し上げ効果を定量的に測定している。これらの分析結果から、研究開発税制の課題として制度の周知活動強化、税務当局からの否認リスク低減、税理士からの支援強化、安定的支援措置と増加インセンティブ措置の併用が提言されている。