令和元年度鉱物資源開発の推進のための探査等事業(鉱物資源基盤整備調査事業(中国におけるEV電池リサイクルを通じたレアメタル確保に関する基礎調査))
報告書概要
この報告は、中国におけるEV電池リサイクルを通じたレアメタル確保に関する基礎調査について書かれた報告書である。世界的な自動車電動化の進展により、リチウムイオン電池製造に必要なコバルト等の鉱物資源需給が逼迫することが予想される中、日本のEV普及は遅れているが、中国では既にEVが普及し始めてから10年程度が経過しており、今後使用済み電池のリサイクル市場が本格的に立ち上がると見込まれている。
中国の新エネルギー車市場は、中央政府の優遇政策および規制政策により2010年代半ばから急速に発展し、2019年までに396万台が販売された。中国政府は2025年までに自動車販売台数の25%を新エネルギー車とする目標を発表しており、これは875万台に相当する。2020年代には車載蓄電池のリユース・リサイクル市場が確実に立ち上がり、2025年にはリユース車載蓄電池の総容量は約1億kWhに達し、リサイクル電池から採集されるコバルトは6,500トンに達すると見込まれている。
市場黎明期の車載蓄電池リサイクル市場は地域的な違いが大きく、京津冀、長三角、広東省の3つの地域に集中すると予想されている。特に京津冀はリサイクルに適した三元系車載蓄電池の比率が高く、これらの地域での事業化が早いと見込まれる。日本企業の市場参入戦略として、診断システムによるデータ連携とプラットフォーム化、リサイクル事業を中心とした診断リユース事業への拡大、自動車メーカーの適正処理支援による協力確保、中国政府機関との強い協力関係確保の4つが提案された。また、日本への資源供給については、コスト競争力の確保、省外持ち出し規制への対応、日本企業のリサイクル材料受け入れ体制といった課題が存在することが明らかになった。
