令和元年度中小企業実態調査事業（リビングラボにおける革新的な社会課題解決サービスの創出に係る調査）調査報告書

この報告は、リビングラボにおける革新的な社会課題解決サービスの創出に係る調査について書かれた報告書である。リビングラボとは、企業・行政・市民が協働し、生活現場での実験を通じてサービスや商品を共創する社会実験の場として定義される。我が国のサービス産業が直面する収益性低下と人手不足による持続性低下の課題を解決するため、高齢化・過疎化等の社会課題解決サービスを創出・拡大し、新たなサービス産業群の創造を目指すものである。本事業では三つの取組を実施した。まず国内外のリビングラボ事例調査として、島根県雲南市、長野県塩尻市、社会福祉法人伸こう福祉会、大牟田未来共創センター、仙台フィンランド健康福祉センターの国内事例と、フィンランドのラウレア・リビングラボ、イギリスのブリストル・リビングラボの海外事例を調査した。次に富山県砺波市でのモデル構築実践では、地域住民・企業・行政が参加するワークショップを四回開催し、課題設定からアイデア創出、プロトタイプ化までの一連のプロセスを実施した。さらに経済産業省内リビングラボの構築では、省内職員と民間企業が協働し、実証実験を含む二回のワークショップを通じて省内における課題解決サービスの共創に取り組んだ。これらの実践を通じて、リビングラボの立ち上げから運営における五つの重要な障壁が明らかになった。参加企業の本気度を引き出すこと、運営主体がファシリテーションノウハウを習得すること、共感する人を増やしカネ・モノ・ヒトの支援を募ること、小さな実証実験を繰り返すこと、常識や規制を乗り越えることである。