令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(国内外のイノベーションシステムを巡る動向調査)報告書
報告書概要
この報告は、21世紀の経済・社会変革に対応したイノベーションシステムの類型化と競争力分析について書かれた報告書である。デロイトトーマツコンサルティングが経済産業省の委託を受けて実施した調査により、過去30年間における国内外のイノベーション事例を体系的に分析し、産業分野別のイノベーションシステムの特徴を明らかにしている。
調査では、IT・ハイテク、医薬品・バイオ、自動車、重工業、消費財、物質・材料・化学、医療機器、産業機械の10産業分野から102事例を抽出し、イノベーションの発生過程を「知の創造」「知の具現化」「知の普及」の3段階に分類した。さらに科学技術的ブレークスルーの有無、顧客・社会的ニーズの有無、オープン・クローズド、ボトムアップ・トップダウンの軸により10類型を構築している。
産業分野別の分析結果では、IT・ハイテクソフトウェアにおいてOSは大企業、アプリケーションはスタートアップによるクローズドかつ事業基点イノベーションが中心であり、AIを中心とした大企業による科学技術基点開発の増加が予想されている。IT・ハイテクハードウェアでは規格化・標準化の進展によりOEMの優位性が限定的となり、CPU等の中核部品メーカーによる基礎研究昇華型イノベーションが主流である。医薬品・バイオ分野は典型的なサイエンス型産業であり、従来のメーカー研究所中心から産官学連携型への移行が進んでいる。自動車完成車では部品効率性と全体快適性の両立により系列化が進行し、今後は部品モジュール化によるメガサプライヤーの優位性向上が予想される。重工業は要素技術の他産業からの応用と大規模投資の必要性から大企業によるオープンイノベーションが中心となっている。これらの分析を通じて、日本の産業技術政策および研究開発・イノベーション政策の改善に資する知見を提供している。
