令和元年度燃料安定供給対策に関する調査事業(緊急時の対応能力の高い石油製品供給システム等に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、令和元年度に資源エネルギー庁が実施した、緊急時の石油供給システムに関する国際比較調査について書かれた報告書である。イラン情勢の緊迫化等地政学リスクの高まりを受け、米国、英国、豪州、ノルウェー、スウェーデンの5か国における緊急時石油供給制度を調査し、日本の制度と比較分析したものである。各国の備蓄政策では、米国はエネルギー省が原油と石油製品を管理し、法定上限10億バレルの備蓄を保有している。英国は民間事業者が年間5万トン以上の輸入者に備蓄義務を課し、国内消費量67.5日分を確保している。豪州には明確な備蓄目標がなく、ノルウェーは前年消費量の20日分、スウェーデンは国内消費量170日分を備蓄している。配給・統制政策においては、米国では2012年ハリケーン・サンディ時にナンバープレート番号に基づく給油制限を実施した実績がある。英国は国家燃料緊急計画により需給調整を規定し、豪州はエネルギー大臣に緊急事態宣言と燃料供給規制の権限を付与している。ノルウェーとスウェーデンは産油国として供給増で対応する方針である。日本との比較では、日本は国家備蓄と民間備蓄の二層構造により231日相当の備蓄を保有しており、他国より長期間の備蓄を確保している。しかし緊急時の配給制度については、海外各国が具体的な実施体制を整備しているのに対し、日本は制度は存在するものの実際の運用経験が限定的である点が明らかになった。
