令和元年度製造基盤技術実態等調査(エンジニアリングチェーン強化のためのデジタル技術活用に向けた調査研究)製造業DXレポート ~エンジニアリングのニュー・ノーマル~
報告書概要
この報告は、日本の製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)によるエンジニアリングチェーン強化について書かれた報告書である。日本の製造業は従来、優秀な現場人材を基盤とした設計・生産一体化により高い生産性と世界的競争力を維持してきたが、デジタル技術の世界的普及により、人的能力に依存してきた従来の強みが通用しなくなる危機に直面している。さらに、世界規模での政治・経済・社会環境の不確実性高まりや新型コロナウイルス感染症の拡大により、製造業を取り巻く事業環境は大きく変化し、これらの不確実性は一時的な現象ではなく新しい常態として中長期的対策が必要となっている。この状況において、製造業は短納期化や開発サイクルの高速化、製品多様化に対応するため、製品設計から工程設計、製造に至るエンジニアリングチェーンの強化が求められており、従来の製造現場でのすりあわせから上流工程での品質・原価作り込みへの転換が必要である。報告書では、エンジニアリングチェーン強化のための5つの観点を提示している。第一に、全社的経営方針・目標の共有とDX推進及びエンジニアリング強化方針の検討、第二に、自社のエンジニアリングチェーン工程や体制の可視化、第三に、従業員の技術・能力の形式化・デジタル化、第四に、BOM共有や3DCAD活用等による組織横断的データ共有仕組みの整備、第五に、継続的デジタル改革のための人材・仕組みの確保・構築である。これらの観点から変革に取り組んだ先進企業の事例も紹介されている。また、企業規模、グローバル展開状況、産業内立ち位置、取引関係性、産業タイプ、生産形態、生産量、デジタル対応レベルという8つの企業属性による切り口も示されており、各企業が自社の特性に応じてエンジニアリングチェーン強化の方向性を検討することの重要性が強調されている。